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亡くなった母親のそばで一晩中祈った韓国発達障害者の悲しい理由

「母は亡くなりました。 助けてください…。」

Yujin Kim
5 years ago
亡くなった母親のそばで一晩中祈った韓国発達障害者の悲しい理由

3人の母娘が心中する前、家主に残した
家賃を払えなくて申し訳ないという遺書


こんにちは

韓国人が毎日お伝えする
最新韓国旅行情報Creatripです。


ソウルの代表的な金持ち町、瑞草(ソチョ)区で2014年に起きた「松坡三母娘死亡事件」をご存知ですか?

生活苦に悩まされていた3人の親子が結局、同伴自殺を選択し人々の悲しみを呼んだ事件です。


このような悲劇について、多くの韓国人は政府のセーフティネットがきちんと機能していなかったことを問題視しています。

2014年の事件だけでなく、以前にも韓国政府は社会的弱者の悲しい死が繰り返されるたびに、予防と支援対策を次々と打ち出してきましたが、その時だけの対策だったようです。


その後、6年経った2020年12月、2014年の死亡事件と類似した脆弱階層の死亡事件が再び発生し、この事件で再び韓国国民は心を痛めています。

死亡後5ヵ月がたち発見された母親とホームレスになった息子、彼らにどのような事情があったのかお伝えします。


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社会福祉士のA氏が梨水駅前でホームレスの男性に声をかけている様子

梨水駅の前で野宿をする男性に声をかける社会福祉士A氏 / 出典:MBC

この事件が世間に知られるようになったのは、社会福祉士であるAさんの役割が大きくありました。

黒い服を着た男性がうつむいたままソウルの梨水(イス)駅の前に座っています。誰も話を聞いてくれず、3か月もの間ここでずっとこうしていたそうです。

2020年11月、無関心な通行人が通りすぎていく中、社会福祉士のAさんは男性に声をかけました。


男性は募金箱に書いた言葉「母が5月3日に亡くなりました。助けてください。」を指差しました。

社会福祉士はこの男性と会話をしながら、この男性が発達障害を持っているという事実を知ったと言います。

老朽化した建物、社会の経済的な脆弱階層を象徴するイメージ

最初、男性は社会福祉士のAさんから話しかけられたときに漁船に連れて行かれると思って逃げたそうで、野宿をしているうちに人に対する警戒心がとても強くなってしまったようです。


繁華街である梨水駅でこの男性が1日に稼いだお金は5,000ウォン。ここで数か月間野宿したそうです。

男性との会話を続けていくうちに、社会福祉士のAさんは衝撃的な話を聞きます。

記者のインタビューを受けるA氏

「お母さんは天国にいて、お母さんの体はそのままある(家に)」という男性の言葉を回想するAさん
出典:MBC

「母が携帯で文字を読んでいて、『腕が動かない』って言って倒れたんです。」男性は横で倒れる真似をしながらお母さんの話を続けました。

「そしてハエが飛んできて、幼虫がでてきて、私の部屋まで幼虫が入ってきました。」


誰も真剣に聞かなかった彼の話を聞いて本当かもしれないと判断したAさんは、警察と一緒に男性の家に向かいました。

その家には実際に、男性の母親キム某さん(60歳)が死亡していたそうです。

銅雀(トンジャク)区の梨水駅近くで野宿していた36歳の発達障害者である男性チェさんに、福祉士が手を差し伸べてから1ヵ月がたった時でした。

ソウルの方背洞にある3階建ての集合住宅

母親のキム氏と息子のチェ氏が一緒に住んでいたソウル方背洞ビラ3階

2020年12月3日、再建築を控えたソウル方背洞(パンベドン)にあるビラ(低層の集合住宅)で発見されたキムさん。

金持ちの町として知られるソレマウルから歩いて10分の距離にある町でした。


遺体は所々骨が露出するほどひどく腐敗した状態でした。

亡くなったキムさんは基礎生活保障の受給者で、10年以上この家に息子の発達障害の男性、チェさんと暮らしてきました。

しかし、キムさんは2008年11月から、健康保険料を支払えず長期滞納していて、病院に簡単に行ける状況ではなかったそうです。


他殺の痕跡もなく、母親が倒れた日に母親が何度も嘔吐したというチェさんの証言、そしてキムさんは脳出血手術など、持病があった記録から、警察はこの事件を「持病による変死」と判断しました。

地下鉄の駅で寝るホームレスの人々

警察の捜査の結果、キムさんは死亡してから少なくとも5ヵ月は経っていると推定しました。

発見当時、薄くて古い布団で覆われていた金さんの遺体。

ガムテープで布団の端をビニールの床に貼り、隙間なくふさいである状態でした。


チェさんは警察の調べに対し、「母が横向きになって変な呼吸をしていた。寒そうだったので布団を胸までかけました。」と言い、事故のあった日を思い出し、「ハエが入らないように母の頭まで布団をかけました」とも言いました。

発達障害のあるチェさんは、キムさんが息絶えていく姿を見ながらも、できることが何もありませんでした。


チェさんは警察と福祉士に、「泣きながら母が治りますようにと仏様に祈ったんですが、翌日もその翌日も母は息をしませんでした」と言いました。

5000ウォン紙幣を数える手の拡大写真 出典:YTN

しばらくの間チェさんは、亡くなった母親の遺体をそばで守っていたそうです。

空き家に座ってノートに「私の母は体の麻痺で亡くなりました。 助けてください」と書きましたが、読んでくれる人がいませんでした。


食べ物が底をつき、電気まで止められてテレビも映らないので、家でやることがなくなると、家を出たチェさんはその時から地下鉄の駅で寝るようになったそうです。

どんなに野宿をしたかは明らかではありませんが、「秋ごろから家には全く帰れませんでした」と言うだけだったそうです。


ソウル銅雀区梨水駅12番出口の前で物乞いをしながらうずくまっていたところ、福祉士のAさんに会いました。

Aさんは「長い間体を洗っていない姿で、手は全部はれ上がった状態だった」とし「工事現場の作業員たちが着る上着と靴を履いていた」と当時を振り返りました。

蚊駆除の作業をする人々。地域社会での公共僱用を象徴

キムさんの死亡前も親子は長い間貧しさに苦しめられていました。

全羅北道に住んでいたキムさんは夫との不和で1993年にソウルに引っ越して来ましたが、発達障害のある9歳の息子を置いていくことができなかったため、一緒に来たそうです。

キムさんは一定の職場を持たず、政府事業である公共雇用事業で生計を立ててきました。

古い住宅と新しい高層住宅が見える風景

2019年5月から10月までの62日間、町内で蚊防疫活動を行う「蚊保安官」として働き、計124万ウォンを稼いだのが最後に記録されたキムさんの所得でした。

キムさんの世帯は、住居給与(中位所得45%以下)を受け取る基礎生活保障受給者で、2018年10月から毎月25万ウォン程受け取っていました。


警察が遺体を発見した当時、キムさんの家の玄関の内側の壁には、電気の供給を中断するという案内文の赤い紙がたくさん貼ってありました。

世の中をよく知らなかった息子のチェさんは「なぜ家賃を払うのですか?出さないとなぜ追い出されるのですか?電気代はどうして払うんですか?電気はどうして切れるのですか?」と問い返すばかりでした。

路上で行われる募金活動、経済的苦境を示唆するイメージ

チェ氏が住んでいた古い家の裏に見える、大きくて高額な住商複合マンションの姿

キムさん親子は基礎生活保障の受給者であり、福祉対象として管理されるべき対象でしたが、地域社会は手助けするどころか、数ヵ月間も悲劇に気付くこともできませんでした。

息子が家の外に出なかったなら、母親キムさんの遺体は、もしかしたら今でもなお放置されていたかもしれません。


当時チェさんは死体遺棄の疑いで警察の調査を受けました。

警察は、チェさんが容疑を晴らす可能性が高いが、障害者登録がされていない状態なので、手続き上の調査が避けられないと明らかにしていました。

全羅北道で小学校2年生まで通った36歳のチェさんは知っていることがあまりありませんでした。

字の読み書きができて、数字も1から10まで数えて、電話もかけられましたが、それだけでした。

福祉司のAさんは、「チェさんは、『通報』や『隣人』の概念を理解していない。日常生活は可能だが社会生活は大変で、詐欺のような犯罪には無防備だと考えればいい。」と説明しました。


福祉士Aさんはチェさんの障害者登録と自立準備を手伝いました。

遅れたものの、瑞草区と洞住民センターはチェさんの障害検査費と葬祭給与を支給し、チェさんを緊急福祉対象者に選定して、毎月生計費45万ウォンほどの支援をもらっているそうです。

今もどこかでチェさんが幸せに暮らしていることを願います。




地域社会や洞役所、市役所など自治体がもう少し関心を持っていたら、このような悲劇が発生する前に彼らを助けることができたかもしれないのに、本当に残念です。

国や自治体だけでなく、人々の他人への無関心さが招いたこの事件によってもう一度、貧富格差問題を越え社会構成員全員が人間らしく生存できる最小限の義務のために、私たちが何をすべきか考える原因となったらと思います。

生活苦によって、このような悲しい死が繰り返される姿を通して、韓国社会では経済的に脆弱な階層に対する死角地帯がどれだけ大きかったのか、本当に大きく感じられました。



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ここまで、亡くなった母親のそばで一晩中祈った韓国発達障害者の悲しい理由についての記事でした。お問い合わせ事項がある場合、本ブログ記事のコメント欄にご記入いただくか、help@creatrip.com までメールもしくは、公式ライン@creatripまでメッセージを送ってください。